Animal case

胆嚢破裂したの犬の胆嚢摘出術

【胆嚢破裂したの犬の胆嚢摘出術】

 

8歳のコーギーさん。急に何度も吐き始めて元気がないとの事で来院されました。

お腹の超音波検査では胆嚢の重度拡張と胆嚢周囲組織の浮腫、少量の腹水が確認されました。

そして胆嚢内には大きな結石(黄色丸)が…

胆嚢周囲組織の高エコー(白色)変化・肥厚変化。

画像1:胆嚢腹部超音波検査。胆嚢周囲組織の白色・肥厚変化

画像2:黄色で囲ったのは大きな胆石

 

以上のことから胆嚢結石による急性胆嚢炎・胆嚢破裂と診断し、早期の手術としました。

たた、コーギーさんの状態があまり良くなかったので状態を安定化させるために

数日点滴や消炎薬・抗生剤などを使用してから手術を行いました。

 

お腹を開けると血混じりの腹水を認めました。

通常肝臓にはさまれて存在する胆嚢がすぐに見えるのですが

今回は胆嚢周囲組織が真っ赤に腫れ、胃や肝臓、胆嚢と癒着していて

胆嚢がどこにあるのか分からない様子でした。

画像3:壊死組織があり、胆嚢が見えない。

 

壊死部や周囲組織を丁寧に丁寧に剥離して、ようやく胆嚢を露出。

胆嚢は重度に炎症を起こし真っ赤に変色し、充血・出血しています。

画像4:壊死組織を除去すると胆嚢が確認された。真っ赤に充血している。

 

胆嚢を包んでいる薄い皮膜を切開し、皮膜と胆嚢の間を剥離して胆嚢を肝臓から自由にしてきます。

画像4、5、6:胆嚢を剥離している様子

 

胆嚢の根元の方で穴が開いていて、そこに大きな結石が挟まっていることが確認されました。

画像7:胆嚢管の所で穴が開いている。

根元で胆嚢を切除し、肝臓側に残った胆嚢管を糸で結紮して処置は終了です。

肝臓病が原因の場合もあるので肝臓の一部を切除生検します。

お腹の中を十分に洗浄し、閉創して終了です。

画像8:胆嚢切除と肝生検を終えた所。胆汁の漏れや出血がないことも確認する。

胆汁の漏れがありそうな場合はドレーンを設置することもあるが今回は入れずに済んだ。

 

胆石は巨大で、胆汁を排出するタイミングで出口に挟まったことで

胆嚢圧が上昇し、炎症・出血・破裂を起こしたと思われました。

画像9、10、11:胆嚢に嵌っていた巨大な胆石。

 

術後はしっかりと抗生剤や消炎・抗炎症拡散剤、点滴などを行いました。

経過は良好であったため術後4日目に退院としました。

自宅に帰ってからもとても元気で術後7日目に抜糸して終了としました。

無事に終わって良かったです。

 

胆嚢の病理結果は「壊死性出血性胆嚢炎」であり、

胆石分析の結果は「ビリルビンカルシウムおよびステアリン酸カルシウムの合石」でした。

胆嚢内胆汁の細菌培養では「大腸菌」が検出されました。

 

 

胆嚢摘出は予防的な摘出の場合は数%程度の周術期死亡率があるとされているが

破裂している場合には20%程度まで上昇すると報告があります。

無事に終わって良かったです。

今後は肝臓内に存在する胆管に結石などができないように適度な運動と少量頻回の食事、低脂肪食で維持していきます。

 

胆嚢結石は問題なく寿命を全うする場合もありますが

今回のように胆嚢出口にはまって胆嚢破裂をすることがあるので

慎重に経過を観察する必要があり、予防的な胆嚢摘出や

悪さをした場合には早期の手術が望まれます。

 

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