Animal case

鼻の穴を広げる手術(鼻翼切除・外鼻腔拡大)

鼻翼切除・外鼻腔拡大術

去勢手術の相談に来てくれたパグの男の子。

手術前のパグさん。鼻の穴が狭い

去勢手術だけの予定でしたが鼻の穴がとても狭く
まだ小さいのにガーガーと大きな音を立てて一生懸命頑張って呼吸をしていました。

これは『外鼻腔狭窄症』という短頭種にとても多い、鼻の穴が小さいことで生じる呼吸障害です。
呼吸不全までの悪循環のファーストステップであり、放っておくと軟口蓋過長、喉頭浮腫などの呼吸不全や熱中症の発生リスクを上げるので早期の手術が望ましいと考えられています。
これら短頭種にまつわる呼吸器症状を『短頭種気道閉鎖症候群』と呼びます。

 

『外鼻腔狭窄症』はご自身の鼻を軽くつまんで鼻呼吸してみると簡単に実感できます。
鼻のくぼみに指を置いて少しせばめて呼吸してみましょう。

指を置いただけでも空気が吸いにくく、息苦しさとストレスを感じると思います。
もう少しつまんでみてください。ほとんど吸えないかと思います。
そして吸うためにかなり力がいると思います。
それを解除すると、かなり楽になると思います。
少し鼻の穴が少し狭くなるだけで苦しく、少し広がるだけで呼吸はかなり楽になるのです。


このパグさんはまだ軟口蓋などに異常がなかったので今回は去勢手術と同時に鼻翼切除による外鼻腔拡大を行いました。

 

麻酔をかけ、去勢手術を5分くらいで終わらせ、次に鼻の穴を狭めている鼻翼領域をメスで切除し
細い糸で縫い、鼻の穴を広げました。

 


手術前の鼻の穴手術前の鼻の様子。鼻の穴が狭い


右鼻の穴を広げた様子。

右側の鼻の穴を広げた。左に比べて広がっているのが分かる。

両鼻を広げた様子。手術前よりも広がっている

 

少しわかりにくいかもしれないですがこれで鼻の穴が広がりました。
実際にパグさんの術後の呼吸音はかなり改善し、本人も楽そうでした。

術後10日〜14日程度で抜糸を行い終了です。
切除して縫ったところは鼻の色が一時的に変色しますが、数ヶ月すると元の色に戻ります。
手術前のパグさん。鼻の穴が狭い

上画像;術前。鼻の穴が狭い。下画像:術後。鼻の穴が広がっている。

術後のパグさん。鼻の穴が広がっている
あとは成長と共に呼吸様式を見ながら
更なる鼻翼拡大や長くなった軟口蓋の切除などの必要性を観察していく予定です。

呼吸が楽になって良かったね!

 

まとめ

パグやフレンチブルドッグなどの鼻が短い犬種(短頭種)は鼻の穴が小さく
鼻から肺までの気道が全体的に狭いので呼吸をするのに抵抗がかかり一生懸命呼吸している。
そのため、ガーガーと大きな音を立てて呼吸をし、実はかなり苦しい。

力を込めて吸うので鼻咽頭部に吸引圧がかかり
喉奥の軟口蓋というところが気道に吸い込まれて伸びたり(軟口蓋過長)
気管入り口の喉頭小嚢が反転・浮腫を起こすなど気道閉塞が悪化する。

長くなりすぎた軟口蓋は気管の入り口に覆いかぶさったり気管に吸い込まれたりして
更なる気道閉塞や重度の呼吸不全を起こし
過剰なパンティングによる熱中症や低酸素による窒息死・突然死を起こすことがある。

そうならない様、早期に鼻の穴を広げ、空気の流れを良くすることで
将来の呼吸不全に備える手術を行うことで軟口蓋過長や進行を遅らせることができる。

鼻翼拡大や軟口蓋切除術に興味がありましたらご相談ください。