Animal case

20歳の超高齢猫の後ろ足の大きな腫瘤切除手術

後ろ足に腫瘤ができてしまった19歳おばあちゃん猫

最初は小さなしこりでしかなく

しこり内に溜まった水など年を抜きながら

年齢を考えて手術はせずに経過観察としていました。

4cm大の柔らかい腫瘤。

それから1年半経っていよいよ大きくなり

痛みや歩行障害がでてきてしまったため全身麻酔をかけての切除としました。

巨大な腫瘤に成長。痛みと重みで歩きにくい。

 

この時すでに20歳。

体表腫瘤で短時間で終わるとは言え、

やはり20歳と高齢なので手術を安全に行うには入念な準備が必要です。

 

 

まずは麻酔に耐えられる体なのかを確認します。

血液検査やレントゲン、エコーなどで臓器の状態を把握します。

20歳ですが腎臓や肝臓、心臓などに特段大きな異常は認められませんでした。素晴らしい!

胸と足のレントゲン。足の腫瘤は骨と関連がなさそうである。

 

 

それでも麻酔による一過性の臓器の機能低下が心配されます。

そこで麻酔プランとして呼吸抑制作用の少ない麻酔薬と

血圧を維持し腎保護を目的とした昇圧剤、腎臓に優しい鎮痛剤、

術前術後の入院点滴による十分な水和をプランニングしていざ手術です。

 

手術の様子

右後ろ足の大きな腫瘤。

止血をしながら腫瘤を分離していく

切除完了。大事な血管や神経は無事であった。

傷を縫合して閉創。腫瘤が大きかったので傷も大きい。

切除した腫瘤。とても大きいのでこれでは生活に困ります。

手術自体は20分程度で終わりました。

この時間だとまだ注射麻酔が効いている時間なのと

麻酔薬の代謝がゆっくりなため覚醒もゆっくりのんびりでしたが無事に醒めてくれました。

腎臓保護のために術前からも点滴入院を行い、術後も1泊入院させて

点滴をしっかり行って翌日退院となりました。

年齢のため傷の治りも少しゆっくりでしたが

大きなトラブルなく術後2週ほどで抜糸を行い、終了となりました。

病理検査の結果はアポクリン腺腫という良性の腫瘍でした。

術後は足の痛みや重さも取れて快適に過ごしているそうです。

無事に治ってよかったです。

高齢猫では歯周病から口が痛くて食べられなくなってしまったり

腫瘍ができて生活の質が下がったりと

治すために麻酔をかけての処置が必要になることがあります。

高齢猫の麻酔は注意することがたくさんありますが

上手に管理することで手術が可能な場合も多いです。

お困りの際はご相談いただけたらと思います。

抜糸を終えてゴロゴロとご機嫌な様子。